「ウィーン・モダン展」国立国際美術館 クリムトにシーレ、世紀末のウィーンは芸術の宝庫

「ウィーン・モダン展」国立国際美術館 クリムトにシーレ、世紀末のウィーンは芸術の宝庫

2019.10.13

会場でまず目にするのは、城壁に囲まれた都市を描いた絵。芸術の都という印象とはかけ離れていますが、過去のウィーンの姿です。次に、この都市に君臨したハプスブルク家のマリア・テレジア、その息子ヨーゼフ2世の巨大な肖像画が出迎えます。

やがて、絵画や装飾品など華やかな芸術が花開き、グラフィック・デザインが登場し、終盤になると過剰な装飾が省かれた家具や建築が台頭する。18世紀〜20世紀初頭にかけて近代化していくウィーンという都市の移り変わり、その中で生まれた芸術や文化を紹介しているのです。

大阪の国立国際美術館で、特大ヴォリュームでウィーンを知る展覧会を堪能してきました。

絵画だけじゃない、充実した展示内容

特筆すべきは、ジャンルをまたいだ展示が多いこと。その範囲は建築、グラフィック・デザイン、音楽、家具、服飾等多岐にわたります。家具や調度品は実物が展示されていたり、建築は模型や設計図、実際の都市の様子を映した写真があったり、なんていうか3D寄りな構成になっています。工芸や服飾が大好きなので、これはうれしいポイントでした。

中でも面白かったのが、絵画と実物を並べた展示です。ウィーン会議の様子を描いた絵画の隣に、当時の外相が使っていたアタッシュケース。シューベルトの眼鏡を展示するケースの横には、実際にその眼鏡をかけた彼の肖像画が。半ば物語として見ている歴史や作品が現実とつながり、生々しく感じられました。

ちょっと意外だったのは、グラフィック・デザインの分野でした。実は、ウィーン分離派にとって、グラフィック・プリントは重要なジャンルだったそう。ウィーン分離派は、クリムトやシーレが属していた芸術家のグループで、それまでの美術界とは違った新しい表現を追求していました。その新しい芸術を広く知らしめるために、雑誌やポスター等を製作したというわけ。壁一面を埋めるポスターは圧巻です。

意外と点数が多いクリムト

目玉の一つであるクリムト作品は、意外と量がありました。愛知県でクリムト展を開催していたので、ほとんどそちらに行っているのかなと思ったのですが、そうでもなかった。メインビジュアルになっている『エミーリエ・フレーゲの肖像』をはじめ寓意画やデッサン等が計18点、展示されています。

エミーリエ・フレーゲの肖像のみ、フラッシュなしで撮影できます。

とくに見たかったのは、やっぱり『エミーリエ・フレーゲの肖像』と『パラス・アテナ』。『パラス・アテナ』は、背景に描き込まれているトリトンとヘラクレスが気になってまじまじと見てしまいました。この描き込みは、実物の方が印刷物や画面上で見た時より存在感があるんじゃないかな。

エミーリエとクリムトについては一コーナーを設けて開設されており、エミーリエが所有していたアクセサリーや再製作されたドレスなどが展示されていました。

再製作品ですが、クリムトが着ていたスモックもありましたよ。これ、グッズにもなっていましたね。なんか結構大きかったです。ずるっと着るデザインだからなのか、それとも以外に大柄な人なのか、写真ではいまいち分からなかったな。

実物から感じるエゴン・シーレの存在感

実を言うと、シーレは病的な感じがして敬遠していました。ところが、実際に見ると、なんだか妙に気になるというか引き込まれるというか、目が離せなくなりました。

シーレの自画像は、図録の裏表紙にもなっています。

シーレ作品が気になったのは私だけじゃなかったみたい。ミュージアムショップに『ひまわり』のミニポスターがあったのですが、これ、展覧会開幕後に多くの要望があり追加製作したそうです。縦長の黒いひまわり、サイズもちょうど良くて、すてき。悩んでやめたのですが、買って帰ればよかったかなとちょっと後悔しています。(でも部屋に飾るとなると、それはそれで結構悩む)

ミュージアムショップはディープなグッズとスタッフの熱意が最高

今回のグッズは、本当にこだわったポイントが多い!

例えば、このクリムトくんとエミーリエちゃんの刺繍キーホルダー。現存する写真を参考に、身長差をリアルに表現してあります。

イニシャルマグカップのモチーフは、出品作に書かれたり刻まれている文字を使用しています。それぞれどの作品から取られた文字なのか、説明がついているところが憎い。

ウィーンの紅茶店ハース&ハースのフレーバーティーとフルーツティーもありました。8〜10種類くらいあり悩んでいたら、スタッフさんが来てアドバイスをしてくれました。

それぞれの特徴や選び方、自分はこんな時に飲んでますよ〜というお話をしてくれたのですが、もうね、熱意がすごい。とくに、パッケージをひっくり返して軽く押さえる匂いの嗅ぎ分け方なんて、すごく参考になりました。これは絶対自分では思いつかなかったもん。

……欲を言うと、淹れ方(g数と水量)が書いてあると淹れやすかったな。(ネットで検索して、公式サイトで紹介されている分量で淹れました)

最後に、どうしてもほしかった銀のふせん。ウィーン・モダン展では、ビジュアルやグッズの要所に銀色が使われています。

ちなみに、クリムト展にも同じふせんがあります。内容の関連性に加えて、東京で同時期に開催されたことやショップの運営が同じ会社であることから、グッズも対になったものがあるのです。クリムト展のふせんは、キーカラーに合わせて金色でユディトがモチーフなの。

誘惑の多すぎるミュージアム・ショップでした。ええ、褒め言葉ですとも。

おわりに

東京会場では、クリムト展と梯子ができたウィーン・モダン展。両方見られなかったのはとても残念でしたが、こちらだけでも十分な見ごたえでした。


  • ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道
  • 会期:2019年8月27日(火)〜 12月8日(日)
  • 会場:国立国際美術館(大阪・中之島)
  • 開館時間:10:00~17:00(8・9月の金曜・土曜は21:00まで。10〜12月の金曜・土曜は20:00まで)
  • 休館日:毎週月曜日(9月16日、23日、10月14日、11月4日は開館し、翌日休館)
  • https://artexhibition.jp/wienmodern2019/

今日の美術館ごはん 博多廊(三井ガーデンホテル大阪プレミア2階)

国際美術館から徒歩3分のところにある、三井ガーデンホテル大阪プレミア2階の博多廊。お昼ごはんはこちらでチキン南蛮定食をいただきました。1000円以内でがっつりランチが食べられる、和洋食のお店です。

九州名産の、お肉を使ったメニューが多いですが、お造りや天ぷらなど、和食中心の定食もあります。

このホテル、国立国際美術館にすごく近いのです。大阪市立科学館や大阪科学技術館、中ノ島香雪美術館や大阪市立東洋磁器美術館も徒歩圏内で、はしごするのも便利そう。次はここに泊まって鑑賞しに行きたいな。