「サヴィニャック展」広島県立美術館 明快で楽しいポスターの魔法にかかる

「サヴィニャック展」広島県立美術館 明快で楽しいポスターの魔法にかかる

2019.01.15

「明快で簡潔で、はっきりしたものが好きだ」とサヴィニャックは言いました。

彼が描いたのは、かわいらしい動物やキャラクターたち。色鮮やかで見ている方まで楽しくなってくるようなイラストレーションです。同時に一目で何のために描かれたのか分かるものばかり。なぜなら、彼が作ったのはポスター、ものの良さを伝えるためのグラフィックだったのです。

フランスを代表するポスター作家レイモン・サヴィニャックの展覧会を県立広島美術館で見てきました。

見る前から楽しくなる会場づくり

まず入口で、それから館内で。みなさんきっとスマホかカメラを構えると思います。ひょっとしたら歓声もあげるかも。

館内のいたるところにサヴィニャックのイラストレーションが飾られています。展示室を飛び出したキャラクターたちに、この時点から楽しい気持ちがむくむくと。正直に言って盛り上がる。

さらに、展示室のある3階フロアには顔出しパネルやフォトスポットも。

イマドキで面白い試みだなと思いました。インスタ映えじゃないけど、「見せたい」はもちろん「残したい」というニーズもかなりあると思うんですよね。私は見せるより残したい人なのだけど、こうして写真が撮れるとありがたいです。スマホで簡単きれいに写真が撮れるようになったのってすごく大きい。

ついでに会場外で撮りたい欲を発散しとけば、中で作品をこっそり撮る人も減るんじゃないかとも思ってみたり。

かわいくて楽しいイラストレーション

会場には、ひたすらたくさんの作品が並びます。ポスターだから大きくて見やすい。平日で人も少なかったので、かなりのびのびと見ることができました。子どもさんと一緒に行った方も楽しめたと言っていましたよ。

展示室の入口もかわいい。

冒頭でも述べましたが、とにかく見ていて楽しい。鮮やかな色彩を使ったイラストレーションとかわいいキャラクターや動物たちがいっぱいです。「私はこれが好き!」「あの絵かわいい!」と話したくなります。

音声ガイドはないけど、同行者と感想を共有し合いながら見るのもいいものだね。と言いつつ、いつも使うので、ないとちょっと物足りない気持ちも(笑)

ちなみに私は人型のキャラクターたちがとくに好きです。動物も間違いなくかわいいんだけど、何だかキャラクターたちはより楽しそうに見えたんですよね。顔の表情が出やすいからかなーなんて思ってます。

グワッシュで描かれた原画もまじまじ見ちゃいました。原画もポスターと同じ、もしくはそれ以上に大きいです。よく見ると鉛筆で描かれた下書きの線が見える。

専門学校時代の友人とよく話すことですが、下書きの線や修正の跡があると、作家が身近に感じられてホッとします。同じように人間が描いたんだ!って思えるからかもしれませんね。

わかりやすいをつきつめたポスター

作品のもう一つの特徴が「わかりやすい」ということ。どのポスターもどんな製品をPRしているかすぐに分かります。

これは森永のチョコレート。

ことわざや言葉遊びをもじってテーマにしているものも多くて、楽しくユーモアが効いてます。残念ながらフランス語なので、我々は注釈を読みましょう。

後半では晩年の作品が配置されているんですが、そこではモチーフとキャラクターが一体化した絵が増えています。より分かりやすいものを目指したら、一つの絵で完結する手法に行き着いたそう。

早く!アスプロ<鎮痛剤> なるほど……。

分かりやすくPRをする。見た人を楽しい気持ちにさせる。これって広告の一番大事なところだなあ……と、デザインをかじった者としては、考えさせられてしまいました。

遅咲きだけど長いキャリアの持ち主

「私は41歳の時、モンサヴォン石鹸の牝牛のおっぱいから生まれた」と本人が語るように、サヴィニャックが有名になったのは、かなり遅めです。

年表で確認すると、カッサンドルに師事し本格的にポスターを手がけ始めたのが26歳、ベルナール・ヴェルモと二人展を行なったのが41才の時のこと。この二人展をきっかけにモンサヴォンのポスターで注目されます。

それまではというと、二回の戦争で従軍したり、何度か職を失ったり。紆余曲折ある人生だったようです。年表内にちょくちょく現れる(求職中)という文字がなんというか切ない。両親は飲食店の経営者で、彼の仕事にはあまり理解がなかったようなことも、映像コーナーで語られています。

それでも成功を掴み取ったサヴィニャックは、実は94才という長生き。人気が出た41歳も、考えてみれば人生のうちの半分よりも前の時点になるのですよね。何事も諦めずに続けることが大事だなって思わされました。


  • 「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」
  • 会期:2019/1/5(土)〜2/11(祝・月)会期中無休
  • 会場:広島県立美術館 3階企画展示室
  • 開館時間:9:00〜17:00 ※入場は閉館30分前まで ※1/5は10:00会場
  • http://www.hpam.jp/special/index.php?mode=detail&id=194