「みんなのレオ・レオーニ展」ひろしま美術館 カラフルなたのしさとアイデンティティ

「みんなのレオ・レオーニ展」ひろしま美術館 カラフルなたのしさとアイデンティティ

2019.05.10

GWが終わって少し経ち、じりじりと暑くなってきた日。ひろしま美術館へみんなのレオ・レオーニ展を見てきました。レオ・レオーニ作品は子供の頃からよく読んでいたので、なつかしい気持ちでいそいそと出かけてきました。

色鮮やかで、多才!

階段を降りると(ひろしま美術館の展示室は半地下です)油彩画が展示されています。同じ空間に流れている映像は彫刻を作っているレオーニ氏のインタビュー。あまりに既知のイメージと違うので不安を感じつつ奥へ進むと、よく知った絵本の原画がずらりと並びます。

最初の作品は「フレデリック」。別々に作ったパーツを張り合わせて描かれているのですが、絵本で見るより立体的で、紙の重なりがよく分かります。次の作品はオール色鉛筆。その後も油彩や水彩、鉛筆……と作品ごとに様々な画材が使われていました。

レオーニ作品、家にもこれだけありました。

驚いたのは画材が変わっても作品の印象が変わらないこと。色々な手法も自分のものにしていて、出したい表現によって使い分けているんだなあと感心しきりでした。どの作品も色が鮮やかできれいなので、いつまでも見ていられそう。

後半では、モノタイプ(ガラス板に絵の具を塗り紙に押し付けて転写する技法)の作成風景が動画で解説されていて釘付けになりました。偶然の要素が強いのでどんな柄になるかはやってみてのお楽しみ。転写された紙の中からピンときたものを選んで、葉っぱ等の形に切って貼り、絵を作ります。これはすごく楽しそうで私もやってみたいなあと思いました。

何者であるのか、何者になるのか

キャプションを読むと、多くの作品にアイデンティティについて記述があることに気づきます。そう言われてみればたしかに、レオ・レオーニ氏の作品にはみんなと違った存在を描いたものが多い。有名なものだと「スイミー」は赤い色の兄弟たちの中で一匹だけ黒い魚です。立って歩いたワニやカエルの真似をした魚とか、自分と違うものになろうとすることもよく出てきます。

会場では、こうした特徴はレオ・レオーニ氏がユダヤ系であることに起因するのではないかと語られています。ユダヤ人迫害といえばヒトラーが有名ですがレオ・レオーニ氏が生きたのはちょうどその時代。第二次世界大戦中にはアメリカに亡命をしています。

ちょっと調べてみたところ、ユダヤ人の迫害の歴史については紀元前13世紀頃まで遡れるほど古いのですね。旧約聖書にも書かれているできごとですから、ユダヤ系に生まれるということがアイディンティティの形成に関わるのは、当然の帰結と言ってもいいのかもしれません。

あまり知られていない一面も

絵本作家としてのレオーニ氏とは違う側面も展示されています。その最たるものが「平行植物」のシリーズ。

想像上の植物をモチーフにしたシリーズで、会場では油彩画や彫刻等が展示されていました。中でも彫刻は圧巻。横は両手を広げたくらい、高さは腰ぐらいかなぁ……かなり大きくて存在感があったと記憶しています。

私が一番好きなのはスケッチの展示。ボールペンで描かれた下書きで、A6くらいのリングノート1枚につき植物が1つ描かれています。これは、手帳好き、ペン画好きの人には絶対刺さるやつだと思うので、心当たりのある人にはぜひ見てほしいです。残念ながら図録には掲載されていなかったので、今のところ展示でしか見れないみたい。

立体の展示や什器もありました

入口から中を見たときに大人がたくさん座ってて何事かと思ったのですが、絵本が読めるコーナーが数カ所設置されています。数もたくさん揃っていたので、つい座って読んじゃう気持ちはよく分かりました。他にも動いたり音が出たりする展示がいくつか作られています。

中でも、必ず2人以上で見て欲しいのが映像展示のコーナー。「あおくんときいろちゃん」の表紙のような絵が投影されています。この映像は人に反応して「あおくん」や「きいろちゃん」が投影されるのですが、なんと近づくとくっついて混色されるのです! 遊び心がある〜!

おわりに

なつかしい絵本や美しいイラストがたくさんあり、楽しく鑑賞することができました。今回は展示室が1室使われていなかったので、いつもよりボリュームが少なめなのかな? 集中しても1時間くらいで見られたので、気軽に出かけるのによいかもしれません。


  • 「みんなのレオ・レオーニ展」
  • 会期:2019/4/20(土)〜6/2(日)会期中無休
  • 会場:ひろしま美術館
  • 開館時間:9:00〜17:00 ※会期中の金曜日は19:00まで ※入場は閉館30分前まで
  • https://www.asahi.com/event/leolionni/